宮本恒靖監督でガンバはどう変化?
大激戦の残留争い、3つの光明。

 宮本恒靖監督の力の入ったガッツポーズが、その勝利の重要さを表していた。

 ガンバ大阪はJ1第27節の清水エスパルス戦に2−1で勝利し、今季初のリーグ戦3連勝。このまま勢いに乗っていきそうな気配である。

 この日は前半26分までに2点を取るなど、攻守ともにいい流れで運んでいた。「3点目を早く取りたかった」と宮本監督が言うように、早く3点目を取れていれば試合は簡単に終わっていただろう。だがそこで追加点を取り切れず、後半にパワーダウン。相手が3バックにしてガンバのサイドを封じると防戦一方に。終了間際は自陣に張りつけにされた。

 以前までならここから同点にされ、最悪はひっくり返されていただろう。

 しかし、この日のガンバは違った。

 2度ポストに助けられる幸運もあったが、宮本監督は選手交代や3バック変更などでロングボールに対応。1点こそ奪われたが2−1で逃げ切って勝ち点3を獲得した。

若手、システムを試し続けて。

 3連勝の大きな要因は、2つある。

 まず、メンバーが固まってきたこと。簡単に言えば、役者が揃ってきたということだ。

 宮本監督になってからベストの戦い方を見極めるために、高宇洋らを筆頭とした若手の抜擢。多くのポジションで起用し、様々なシステムを試してきた。

 そこで結果が出ないと、外野からはどうしてもチームをイジり過ぎているように見えてしまう。実際、ガンバにも“主力メンバーを固定して戦うべき”という声もあった。だが、宮本監督はその風潮にも動じなかった。得点源であるファン・ウィジョがアジア大会に出場し、今野泰幸が故障するなどベストメンバーを組めない中でのやりくりという事情もあったが、そこを逆手に選手を見極め、システムを試す作業を続けた。

今野がボランチに入って安定。

 宮本監督が選手構成に手応えを感じたのは、第26節のヴィッセル神戸戦の後半だ。

 1点リードされた状況で、3バックから4バックにして今野をボランチに配置した。前で勢いよくボールを奪取する姿勢が出たのと同時に、多彩な攻撃が可能になった。

 遠藤保仁と今野のボランチがボールを持つことができ、2トップがボールを収められるので両サイドが安心して前に出ていける。とりわけサイドハーフの倉田秋、レノファ山口から加入した小野瀬康介のプレーが活きるようになった。

 清水戦後には、宮本監督は自信に満ちた表情でこう語っている。

「康介(小野瀬)が来て、彼の良さを活かしつつも淳吾(藤本)のプレーも見ながら、今の形を少しずつ探してきた。今ちゃん(今野)が戻ってきた当初は3バックのボランチ、もしくはセンターバックだったけど、4バックのボランチで良さが見えた。

 今日の試合、後半はパワーダウンしてしまったけど、前半はいい攻撃ができて、神戸戦のような崩しのアイデアが出ていた。チームがまとまり、選手も自信をもって戦えるようになってきたと思う」

 その好感触は選手たちも同様のようだ。遠藤は「遅いけど、ようやくチームが形になってきた。でも、このメンバーやったらもっとできると思うんで、これからもっと良くなると思うよ」と、まとまりつつあるチームに自信を深めている。

渡邊千真と小野瀬のフィット。

 チームが形になってきたもう1つの要因は、夏に加入してきた渡邉千真と小野瀬がチームにフィットしてきたからだ。

 補強を機にチームを立て直したチームと言えば名古屋だ。前田直輝、エドゥアルド・ネット、丸山祐市ら多くの主力級を獲得して以降に7連勝したが、ガンバも移籍組がようやくチームに馴染んできて、戦術的に大きな役割を果たしている。

 山口智コーチは言う。

「康介が良さを出しているのとともに、千真の存在はすごく大きい。しっかりと前で収めてくれるので、攻撃の形を作れるようになった。今日の1点目も千真がポストで時間を作って裏に抜けた康介につながってオウンゴールを誘発した。千真のポスト、康介の縦に抜ける動きという2人の良さが出て生まれたゴールで、彼らが馴染んできた証拠だと思う」

三浦弦太も「的確」という神の声。

 清水戦、渡邉はポスト役で攻撃の流れを作っていたし、小野瀬は全得点に絡んだ。攻撃面だけではなく、ハードワークできる選手で守備面での貢献も非常に大きい。

 ただ、宮本監督の要求は高い。

「康介は今シーズン、山口で10点取った選手。ガンバではまだ取れてないんで、今日も『ゴールを取ってこい』と言ったけど、取れなかった。もちろんアシストもいいけど、点が取れる選手だけにまだまだ物足りない。ゴールを求めたいですね」

 さらに宮本監督の「神の声」も選手に効いている。

 試合中、宮本監督はテクニカルエリアから再三、相手ボールになると早く自分のポジションに戻り、全体をコンパクトにするように指示を出していた。もともとディフェンダーだけに、守備については基本的なことを“なあなあ”にせず、徹底している。

 三浦弦太が「ピッチに出ている選手だけで修正しきれない時、監督は的確に指示してくれるのでありがたい」というように神の声が効果的に選手に届いているのだ。

今後はタフな対戦相手が続く。

 チームがうまくかみ合い、明るい材料が並び始めたが、まだ降格争いから脱出できたわけではなく、J1残留の保証があるわけでもない。

 残留争いは、勝ち点1差でも上位にいることこそが問われる。

 ガンバは現在17位で、これから残留争いを繰り広げている横浜F・マリノス、湘南ベルマーレ、Vファーレン長崎、柏レイソルとの試合が残されている。それだけでなく首位のサンフレッチェ広島、大阪ダービーなどタフな対戦が待ち受けている。

 それでも宮本監督は、強い意志をこう示した。

「残留争いをしている横浜、湘南、長崎とはホームで試合できるんでね。ホームではいいイメージで試合ができているので、そこでしっかり勝つことはもちろん、広島、セレッソの上位チームとの対戦でどれだけ勝ち点を奪えるか。それが残留に向けて大きなポイントになると思う」

勝ち点は15位と並んでいるから。

 上位との対決でも勝ち点を手にすることで、降格圏から一気に脱出する――。そんな青写真を描いている。

 2012年、ガンバが初めてJ2に降格した時、残り7試合の時点で7勝8分12敗、勝ち点29で16位だった。そのまま最終節まで降格圏外の15位以上に上がることができず、最終戦で磐田に敗れて17位でJ2に降格した。

 今回は残留争いが混沌としており、1試合ごとに順位が変動する厳しい戦いが最後まで続くだろう。だが、'12年と比較してもチーム状態は良くなりつつあり、勝ち点を稼げるようになってきた。しかも17位ながら、勝ち点(30)は15位の鳥栖と並んでいる。

 自力で残留を決められる順位まで、あと1歩だ。

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