鳥取・フェルナンジーニョの“師匠”。
「ミヤモトサン、スゴイデス」

 近年のJリーグの外国人選手は、日本での実績と、生活への順応を買われることもあり、複数のクラブを渡り歩くケースが目立つ。

 今季J1で首位を独走する広島で、得点ランク首位の10得点を挙げているFWパトリックは、川崎F、甲府、G大阪を経て、昨季途中から広島でプレー。鹿島のFWペドロ・ジュニオールは大宮、新潟、G大阪、FC東京、神戸を経て、昨季から鹿島に加わった。

 鳥取のFWフェルナンジーニョも、数多くのJクラブでプレーしてきたブラジル人選手だ。

 初来日は2004年、23歳でG大阪に加入。細かいボールタッチを駆使するドリブルと高い得点力を武器に1年目から活躍し、翌05年にはG大阪のJリーグ初優勝に貢献、ベストイレブンにも選ばれている。

 その後は二度の帰国を挟み、清水、京都、大分、仙台、甲府でプレー。三たびブラジルに戻ったのち、'14年途中に鳥取に加入した。'16年までプレーし、昨年はプロキャリア最初のクラブであるフェホビアーリアに所属。シーズン終了後、一度は引退を決意したが、2年ぶりに鳥取に復帰した。

森岡に指名され、キャプテンに。

 京都時代にチームメイトだった森岡隆三監督から主将に任命された今季、J3では第11節まで10試合に出場して3得点。1月に37歳となったが、個人トレーナーとのフィジカルトレーニングなどでコンディションを維持しており、フル出場しないときも80分過ぎまではプレーして、チームの攻撃をリードしている。

 これまでJリーグ7クラブに所属し、日本で12シーズン目になるとあって、日本語は聞くことも話すことも、かなりのレベル。今季はクラブに通訳がいるが、2年前まではおらず、チーム内のコミュニケーションはもちろん、報道陣の取材対応も日本語でこなしていた。

「ガンバでの1年目は、通訳にいろいろな言葉を教えてもらった。2年目からはポルトガル語を話せる日本人の友人と一緒に、個人レッスンをしながら覚えていったんだ」

日本についての師匠だった宮本恒靖。

 そんなフェルナンジーニョに「これまで日本でプレーしてきて、一番すごいと思った選手は?」と聞いた。質問を聞き終えると同時に日本語で即答したのは、かつてのチームメイトの名前だった。

「ミヤモトサン。スゴイデス」

 日本での最初のクラブ、G大阪で守備の中心となっていた宮本恒靖だ。'05年のJ1最終節、初優勝を決めた川崎F戦では、フェルナンジーニョのFKを宮本がヘッドで合わせ、勝ち越しの2点目が生まれている。

「すべての選手から尊敬されている、優れた人格の持ち主だった。その上で試合になれば、闘志を全面に出してプレーする。素晴らしい選手だったよ」

 4歳年上の頼れるチームメイトは、日本語の『師匠』でもあった。

「ガンバでの1年目、まだ日本のことを何も知らなかったとき、試合前日にホテルでの夕食が終わったあと、ミヤモトサンが日本語や、いろいろなことを教えてくれた。いつも1時間くらいは話していたね」

 日本語だけでなく、日本人の気質についても教わったという。

「『日本がリスペクトを大切にすることを学べば、もっと日本の文化になじめるし、良いプレーができるよ』と教えてくれたんだ」

理解に時間がかかった「年功序列」。

 当初、日本人のリスペクトの形には戸惑うこともあった。特に理解するのに時間がかかったのが、『年功序列』の意識だ。

「両親から『年上の人には敬意を払いなさい』と教えられてきたけれど、それは年上に限らず、年下の人や子どもに対しても同じ。でも日本では、年上の人に特に敬意を払うけれど、そこに尊敬だけでなく、おびえのようなものを感じることに、ずっと違和感があった」

 そうした気質を理解しつつ、サッカーをプレーする上では障害になりかねない『遠慮』を取り除く努力をしてきた。

誰とでも腹を割って話すのがリスペクト。

「年上の人に特に敬意を払うのは素晴らしいことだけれど、チームの中となれば話は別。年上だろうと年下だろうと、どんな選手とも腹を割って話すことが、自分にとってのリスペクトなんだ。だから、どんどん自分にも話しかけてもらいたいし、問題があったら解決していきたい。日本では、それを周囲に伝えてきたよ」

 鳥取には今季、ブラジルから20歳のFWレオナルド、MFヴィートル ガブリエルも加入した。37歳、チーム最年長のフェルナンジーニョは、同胞の後輩に日本人の気質を教えつつ、日本人に対しては『年功序列』の意識を踏まえ、自ら歩み寄る姿勢で行動している。

「チームで一番年上になった現在は、日頃から何げない会話でもいいので、こまめにコミュニケーションを取ることを意識している。週に1回、ブラジル人選手2人と日本人選手数人を自宅に呼んで、一緒に夕飯を食べて交流を図っているんだ」

「ミヤモトサンに会ったら……」

 そうしたことの原点に、日本での1年目の経験がある。

「私が日本で、これだけ素晴らしいキャリアを築くことができているのは、最初にミヤモトサンに出会って、いろいろなことを教えてもらったから。とても感謝しているよ」

 宮本は現役引退後に指導者の道へ進み、昨季からG大阪U-23の監督を務めている。J3で鳥取とも対戦したが、昨季はフェルナンジーニョがブラジルでプレーしていたため、再会することはなかった。

 両チームは6月16日、とりぎんバードスタジアムで今季初めて対戦する。心からリスペクトしている恩人との再会は、フェルナンジーニョにとっても特別な瞬間だ。

「ミヤモトサンに会ったら、ハグして再会を祝いたいよ。タノシミニシテル」

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